タイトルーこころを育む総合フォーラム
 
ホーム こころを育む総合フォーラムとは 全国運動 有識者会議 提言書申込 声の欄(休止中)
最新報告 会議報告一覧

ホーム > 有識者会議 > 会議報告一覧 > 第21回ブレックファスト・ミーティング

有識者会議 会議報告
 

第21回ブレックファスト・ミーティング レジメ
平成21年4月24日

 

   「こころを育む総合フォーラム」の第21回ブレックファスト・ミーティング(有識者会議)が24日朝、東京・千代田区の帝国ホテルで開かれた。この日は2009年度の取り組みについて話し合った後、大阪医科大学准教授(小児科)で日本小児心身医学会理事長の田中英高氏が「子どもの心を育むために 心身症の子どもと家族から学ぶ――現代人の心の葛藤、その克服」と題して基調報告を行い、同フォーラムのメンバー16人のうち出席した10人との間で熱心な質疑応答が交わされた。田中氏の報告の要旨は以下の通り。

* * * * * * * *

 日本小児心身医学会は、日本小児科学会の分科会。日本で唯一、子どもの心とからだの関係を研究し、いかにして子どもの心を育むかについて研究している。会員は、小児科医を中心に約900名。心理社会的背景によって生ずる子どもの病気、「小児心身症」を対象にしている。主たる活動は、小児心身症の診断・治療・予防の研究、診療ガイドラインを発行し日本全国で標準化した心の診療の普及活動などで、全国での子どもの心の診療医養成に努めている。ガイドラインには、小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン、摂食障害ガイドライン、不登校ガイドライン、繰り返す痛み(頭痛、腹痛)ガイドラインがある。今後は、子どもの心の診療の医学部卒前教育、市民啓発などに取り組む予定だ。

 心の発達の特徴として、各年齢段階に応じた発達があり(精神分析的にみると、口唇期、肛門期、男根期、潜在期、思春期と大まかな段階がある)、それぞれの発達段階にとって不可欠な要素がある。それを上手に与えていくことが保護者や教育者の役目といえる。しかし、心理社会的な関わりがうまくいかなければ、子どもは心に問題を持つことになる。その最初のサインとして、身体に異変を起こしてくるのが一般的な特徴だ。身体の異変には、次のようなものがある。
(a)異変が一時的な場合――比較的軽い身体症状(頭痛、腹痛などの不定愁訴)
(b)症状が持続する、あるいは繰り返す場合――心身症として対応する

 子どもの心身症の代表として、起立性調節障害、不登校、摂食障害、発達障害などが挙げられる。いずれも、子どもの身体の特性とさまざまな心理社会的なストレスが関与して発症する。それらをつぶさに見ていくことで、現代の子どもたちの身体と心の問題が見えてくる。

 起立性調節障害(OD)が最も多い心身症であり、特に日本で多発している。ODというのは、立ちくらみ、だるい、朝が起きられない、夜は寝られないというような症状があるが、中学生の約1割がこの病気になっている。自律神経系による起立時の循環調節が破綻して、全身臓器、脳への血流が低下する病気だということだ。見た目にはとても頑張りのない、だらだらしているような子どもに見える。学校を欠席するので、怠け者にしか見えない。スウェーデンの子どもと比較した私たちの研究によると、日本の子どもは体質的に虚弱で低血圧だ。その理由として、日本人は自律神経の一つである交感神経活動が低下していることが挙げられ、これがODの原因の一つになる。

 心の問題は、ODの子どもの約8割に潜んでいる。これには家庭問題や学校でのストレスがある。家庭問題では、虐待、DV、家庭崩壊、夫婦不和、家庭保護機能の低下(社会のバックアップなしの女性の社会進出)、親の受容力の低下、子どもへの過剰な期待などがあり、ケースによってさまざまだ。学校ストレスでは、いじめの問題、心の問題に関する教師の無理解などがある。スウェーデンと比較した研究では、日本の子どもたちは家庭問題や学校ストレスが多く、心身症など心の問題の発症率がかなり高くなっている。

 心身症の子どもや保護者は、不覚にも発症するに至った彼ら自身の長い物語を持っている。彼らが、医療面接の場で自らの心の旅路を語るとき、治療者は現代に生きる人々の心の葛藤を垣間見ることになる。
 子どもは、こう漏らす。「…学校でいじめられているけれど…言いたくない」「学校は行きたくないし…勉強は遅れるし…でも将来のことは何も考えられない…」「親は怒るだけで、ぜんぜん分かってくれない」
 親は、こう訴える。「この子は私の言うことを聞こうとしません」「子どもが家で暴れて、毎日が苦しみです」「子どもが不登校です。このまま一生、引きこもりなのでしょうか?」「なぜ、こんなにダメな子どもなのでしょうか」「私まで病気なのに、夫はまったく協力してくれません」「なぜ、私だけがこんなにひどい目にあうのですか」「もう人生は真っ暗です。なんのために生まれてきたのでしょうか」
 彼らは間違った生き方をしてきたのだろうか? 心が偏っていたのだろうか?

 しかし、彼らはある時を境に乗り越えていくものだ。ある人は我が子の素晴らしさに気づいた時から、ある人は自らの問題に目を向けた時から、ある人は自らが生かされていることに感謝を始めた時から。
 「人生は一冊の問題集」という言葉がある。人生の苦難困難に正面から学びを深めた時、不幸から抜け出す新しい物語が始まっていくようだ。子どもの心を育むために、小児心身症の家族から学びたいと考えている。

[このページの先頭へ戻る]